機械式時計(手巻、自動巻)のしくみ

機械式時計の中はどんな仕組みになっているのでしょう?

ぜんまい仕掛けの歯車で動いているんでしょ…その通り。ぜんまいのほどけていく力を歯車に伝えて針を動かしているのです。(図-1)

豆知識

香箱車(こうばこぐるま)の中にはぜんまいが入っています。リューズを巻くとぜんまいは強く巻き絞められます。ほどけようとするぜんまいの力が香箱車を回します。香箱車は噛み合っている2番車(にばんぐるま)を回します。同じように3番車(さんばんぐるま)、4番車(よんばんぐるま)、ガンギ車(がんぎぐるま)も回ります。

2番車には分針が、4番車には秒針が取り付けられています。つまり2番車は1時間に1回転、4番車は1分間に1回転するわけです。言い換えれば2番車が1回転する間に4番車は60回転しなくてはいけないわけです。4番車につながるガンギ車は同じ間に一般的な機種の場合600回転します。

豆知識どうやってこのように歯車の回転数を上げていっているのかは歯車の構造を見ると理解できます。それぞれの歯車は図-2のようになっていてカナの歯数は歯車の歯数に比べて少ないのが特徴です。

豆知識図-3のように歯車を隣のカナに噛み合わせて配列すれば同じ軸上の歯車とカナは一緒に回転するのですから歯数の差によって回転数を変えていけるわけです

さて、前に述べたように2番車には分針がついているのですから1時間に1回転してくれなくては困ります。ということは香箱車が1時間に1/6回転してくれれば都合がよいわけです。が、さて、どうやって?ぜんまいはばねですから巻いて手を離せば殆ど一瞬にしてほどけてしまうだろうと想像できますね。ぜんまいがもっとゆっくり、かつ一定した速度でほどけていくようにコントロールするしくみが必要です。その役目をしているのがガンギ車、アンクル、てんぷです。

豆知識

てんぷは上図のように軸を持った金属の輪とひげぜんまいと呼ばれる髪の毛よりも細いうず巻き状のばねとを組み合わせたものです。ひげぜんまいの外側の端を固定しておいて、てんぷの輪を少し回して離すと輪はひげぜんまいの力でいきおいよく元の位置に戻り、さらにその勢いで元の位置を通り過ぎてもっと向こうまで同じくらいに振れ、また戻ってきて元の位置を通り過ぎて振れ、また反対側へ振れるというふうに何回か左右に往復します。このようにてんぷは力を加えると静止していた位置を中心にして周期的に振動します。この動きを利用して歯車の回転速度をコントロールしているのです。

豆知識

まずぜんまいからの力が歯車を介してガンギ車に伝わります。ガンギ車の回転しようとする力がアンクルを動かし、アンクルはてんぷを振動させます。てんぷの振動はアンクルを左右に交互に動かすように働きます。アンクルのその動きがガンギ車の歯車をひとつずつ送っていくのです。時計から聞こえるチクタクはこの時アンクルがガンギ車にぶつかって出る音です。てんぷが1往復するとガンギ車は歯ひとつ回ります。

つまり、てんぷの1往復する一定した振動周期(1往復にかかる時間)が歯車の回転速度を一定にしているわけです。てんぷの振動の周期はひげぜんまいの長さで変わりますから、これをかげんすることで時計の進み遅れを調整します。

ところで時針を回す歯車も必要ですね。

時針は1時間に1/12回転するのですから、分針のついている2番車が1回転する間に1/12回転する歯車があれば良いわけです。

2番車の軸にもうひとつカナを付け、図-3とは逆に下図のよう今度はカナから隣の歯車へと噛み合わせます。

豆知識

いかがですか?時計の仕組みが解ったような気がしてきませんか?

時、分、秒だけでなく月、日、曜日や月齢を表示するカレンダーウオッチ、月末や閏年の修正が不用のパーペチュアルカレンダー、計測機能の付いたクロノグラフや音で時刻を報せるリピーター等にはさらにもっと多くの歯車や部品を組み合わせます。細密で複雑な仕掛けが小さな腕時計の中に納められているのです。時計の中を見ることなどなかなかできないと思われるかもしれませんが、時計ケースがガラス張り(スケルトン)又は。裏側がガラス張りになっていて機械が見える時計もあります。てんぷとアンクル、ガンギ車は忙しく動いていますからすぐに判るはずです。是非一度中を覗いてみて下さい。

資料提供 スイス時計協会FH

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